
「いじめ」は、なぜ最初に「いじめ」とわからないのでしょうか?
それは2つの要因があります。ひとつめの要因は、いじめられているこどもさん自身が「自分がいじめられている」と気づかないというものです。ふたつめの要因は、「いじめられている」という状況を見る感度の要因です。
自分がいじめられていると気づかない
いじめられているこどもさんは、自分の身の上に進行中で起きている『何か嫌な感じの状態』について、それが何(いじめ)であるのかわからないことが多いのです。おそらくこのわからなさは、なんらかの心理学的な原因で『今自分の身の上に起きている何か嫌な感じ』を自分の言葉で表現することができなくなってしまっているのです。
保護者のかたに「いじめられてるんじゃないの?」と日頃繰り返し言われ続けても、こどもさんはうんともすんとも言わない。ある時こどもさんが保護者のかたに怒られるような日常的な場面において、「だって…、〇〇から△△されて…」などと言って子どもさん自身がやっと『いじめ』を吐露し始めるのです。
このようにいじめによる心の傷つきというものは、少し時間が経ってから認識されるのが普通です。これはまさにトラウマの発生機序と類似しています。トラウマがトラウマだと認識されにくいように、いじめがいじめられているこどもさん自身にいじめと認識されにくいのには、以下のような心理学的要因があります。
(1)嫌すぎてぼーっとしている(専門的には「解離」と言います)
(2)いじめている者への同情(専門的には「攻撃者への同一化」と言います)
(3)いじめが怖すぎて身体自体にすくみの反応が出ている(トニックインモビリティという擬死状態)
(4)認知能力
(5)体験そのものを言葉にする能力
これらの要因は、もしかしたら傍目には『がまん』と映っている可能性があります。いじめられているこどもさんにとっては、これらの要因と登場人物が大変多い学校(集団)生活において、自分の身の上に降りかかっていることがモヤの中に埋もれてしまい、結果として自分に何が起きているかわからなくなるのです。
いじめを見とる力
文部科学省の『令和4年度令和4年度令和5年10月4日児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要』という資料の「いじめの状況」という項目を見てみますと、学年別いじめの認知件数は、小学生で最も多く右肩下がりに高校3年性では最も低くなっています。このことは何を指し示しているかというと、高校生ともなるといじめを認知するのが難しい、と言い換えることも可能ということになります。これはいくつかの要因は考えられるでしょう。
(1)学年が上がれば上がるほど、児童生徒の集団力動が複雑になり、いじめが見えにくくなること
(2)学年が上がれば上がるほど、スマホの所持率が上がり人間関係がSNS内に、いじめが見えにくくなること
(3)そもそも年少のこどもたちはいじめを訴えやすく、年長者ほどいじめを訴えないこと
小学校、中学校と学校種が変わるとクラス担任制から教科担任制と授業の仕組みそのものが変わり、中学から高校へに至っては、学校生活におけるクラス担任の役割の比重が変わりますから、学校の教員の児童生徒を見る視点視座は変わります。これらは仕組み上仕方がないとして、その上で学校の教員が児童生徒をどう見とるか、そしてその感度をえげることはいじめの認知にとって大変重要です。言い換えれば児童生徒の観察力を上げるということです。
いじめ対応サービス
いじめに対応するには、①いじめがいじめとして認識されるには多少の時間がかかること、②そしてそれにはいくつかの心理学的な要因があること、③そしてそれは集団力動の中に埋もれてしまっていること、この3つについて十分に承知していることが重要です。
学校がいじめの対応する時に初動時点でミスを犯してしまう場合があります。これは先の3つを承知していないがために、いじめのサインを見逃したり、いじめの聞き取りで指導してしまうといったことなのです。
私たちのいじめ対応サービスは、以上のような理解にたって、いじめられてるこどもさんのトラウマケアとこどもさんと保護者のかたと協力して、どのような配慮や環境調整を学校へお願いするかといった具体的な施策を考えていきます。