基本的なことにはなりますが、いじめの問題をどのように解決していくかということは、3つのことに対応していくことが必要です。1つ目は、現在いじめられているこどもさんに対してどのようにケアしていけばよいか見通しを持つこととです。2つ目は、少しずつこどもさんがどのようないじめにあっていたのか見取り図(仮説)を持つことです。3つ目は、こどもさんが安心して学校生活を送ることができるために、学校にどのような環境調整をお願いするのがよいのか保護者のかたが考えていくことです。
さて、3つの対応の前提条件として、いじめを受けているこどもさんが現在どのような気持ちでいるか考えてみることは有用です。ではどのように考えてみたらいいでしょうか?おそらくは、と言っていいのですが、いじめられているこどもさんは、「仲間はずれにされる」「(集団から)ハブかれる」「(みんなで)無視される」といった周囲の態度によって、明日の学校生活をなんとかやり過ごそうとする気持ちを打ち砕かれています。もしかしたら、「もう無理」という、いわば最後のダメ押しを経験しているかもしれません。いじめられているこどもたちは、ものを盗られたり、小突かれたりするというような自分にとって心地よくない状況があったとしても、なんとかそこ(教室)に留まろうとする行動が垣間見られます。「仲間はずれにする」「(集団から)ハブく」「(みんなで)無視する」という行為は、そのこどもさんの居場所を取り上げる、またはそのこどもさんを閉め出すという行為によって、そのこどもさんの存在すら認めないという仕打ちなのです。だから学校に行けないのです。そしてこの閉め出し行為は、いじめられているこどもさんにとって、世界は自分の存在場所すら奪い取る怖いものだらけと感じてしまう要因となるのです。そう考えれば、いじめられたこどもさんが学校をイメージさせる人・モノを自分から遠ざけ、厭世的な思考に浸り、回避的な日常生活を送っているのも十分に理解できると思います。
私たちの研究所および相談室では以上のような視点で、いじめられたこどもさんやその保護者のかたのバックヤードとして」支援をしていきます。
さて、いじめの問題において、こどもさんおよびその保護者のかたが「何か学校とボタンを掛け違っているなあ」と感じることはよくあることだと思います。それでも大体のところで自体は収束していくことも多いわけですが、重大事態に発展してしまうような掛け違いの場合は、学校の初動対応、すなわち聞き取りに問題があった場合は多いと思います。簡単にいうと、聞き取りと指導をいつの間にか取り違えてしまった場合です。なぜ不幸にもこのようなことが起こるのでしょうか?これはある意味で、いじめられたこどもさんの心理的状態も関わっていることと思います。具体例で言いましょう。いじめられたこどもさんの気持ちにすごく共感した先生方や保護者の方が、「(感極まって)もっと早くいじめられていることを教えてくれればよかったのに」と言って、いじめられたこどもさんを悪気なく責めてしまうことがあります。このようなことはいじめられたこどもさんの心理的状態に対する見取り図を持っていないことで起こります。「早く言ってよ」の例ではいじめられているこどもさんは、今自分の身に進行中で起きている「いじめのようなコト」が何であるのかわからないのです。おそらくこのことは、なんらかの事情で今自分の身に起きているコト・気持ちをプロセスすること(体験を言語化すること)ができなくなってしまったことで起きたのでしょう。そして、保護者のかたに「それっていじめじゃないの?」と繰り返し言われ続けて、やっとこどもさん自身も「いじめかも」と言えるようになるのです。このようにいじめというものには、事後的に認識されるのです。感受側(大人の問題)を抜きにして、このタイムラグが生じる要因として想定できるのは、トラウマの発生機序(トラウマの事後性)と類似の要因であり、
(1)認知能力
(2)①解離②攻撃者への同一化といった心理反応
(3)すくみ反応やトニックインモビリティ(擬死状態)といった身体的反応
(4)体験を言語化する力
などが挙げられると思っています。
いじめの対応については研究所付属相談室での対応となります。ご相談は家族相談(1回あたり100分)となります。またこどもさんのケアについては知能検査と心理検査を行なって問題解決に役立ていきます。
いじめの状況をお聞きします
知能検査と心理検査を行い、心の傷つきを把握します。
さらに必要なことをお聞きします。場合により2〜3回行うことがあります。
聞き取りと心理アセスメントの結果から総合して、助言を行います。
優先順位など簡単に見失います。実行支援(ペーシング)が大変重要な働きとなります。